私たちは、ただ華やかな帽子を、つくっているわけではないのです。
ただ美しいと感じる帽子を、つくっていたいわけでもないのです。
帽子がバッグや靴と大きく違うのは、身につけるものの中で、もっとも顔に近い存在だということです。人に会ったとき、まず目に入るのはお顔。そのとき帽子を被っていれば、帽子もまた、その人の第一印象を作る一部になります。だから私たちは、帽子をデザインすることを、とても責任のあることだと思っています。
もちろん、華やかなもの、美しいものをつくりたいと思っています。
けれど可愛さや美しさは、興味を持っていただくための入口でもあります。
その先で本当に願っているのは、その人が、その人らしく人生を楽しむためのお手伝いをすることです。
子どもの頃、好きだったもの。夢中になったこと。心が躍った色や、動物や、絵本。
大人になるにつれて、社会に馴染もうとするうちに、そうした純粋な「好き」は、少しずつ心の奥へ追いやられていくことがあります。でも、それが大人になることなのだろうかと思うのです。
私たちは、子どもの頃に好きだったものを、やめなくてもいいと思っています。
だからといって、子どもの頃に好きだったものを、そのまま身につければいいということでもありません。大人になった今の自分に自然に馴染み、それでいて、どこか懐かしい記憶の扉を静かに開いてくれるものをつくりたいと考えています。
CIRQUTUREは、そんなものづくりを目指しています。
帽子を見て「子どもの頃、こんな色合いが好きでした!」「昔、こんなぬいぐるみを親からもらったことを今思い出した!」と、忘れていた記憶を、キラキラとした瞳で話してくださる方がいます。さらに、「この帽子を被っていたら、知らない人に声をかけられた」「あまり話したことのなかった会社の人と仲良くなった」「帽子をきっかけに知り合い、友人になった」というお話をうかがうこともあります。
帽子を被ったご本人の気持ちがまず動き、その姿を見た誰かの心も動く。
そこから会話が生まれ、笑顔が生まれる。
そして、人と人との間に小さな物語が始まり、それが少しずつ積み重なって、ひとつの記憶になっていく。
単純に華やかな帽子や美しいと感じる帽子をつくるのではなくて、その人の中にずっとあった「好き」を思い出すきっかけをつくること。そして、その先に、自分らしく生きることや、新しい出会いや経験が生まれること。
もしかすると私たちがつくりたいのは、帽子そのものだけではなく、その帽子を被った先に生まれる記憶や、その人だけの温かな物語なのかもしれません。